分類はミステリー。しかし、本書「
魔性」は成長の物語だと思う。
仕事を辞め、引きこもり状態になった珠世。
偶然、高校生のありさと出会い、川崎市のプロ・サッカーチームのサポーターの仲間入りをした。
現実社会との、たった一つのつながりが、サポーターとしての活動だった。
だが、応援を約束していた試合当日に、ありさが殺されてしまう。
しかも、ありさの携帯から仲間たちに、嫌がらせのメールが届く。
犯人捜しを始めた珠世は、サッカーを接点とした仲間たちに、意外な裏面があることを知っていく。
表と裏の葛藤の中で、人は生きている――そのことを実感し、自らの生活を顧みる珠世。
事件の進展とともに、次第に心を鍛えられ、成長していく姿に励まされる。