“縁切り寺”と呼ばれる鎌倉の東慶寺を舞台にした、一風変わった時代小説「
おねだり女房 影十手活殺帖
」。
4編の短編時代小説が収録されている。
タイトルにもなっている「おねだり女房」は、義母のいびりに耐えきれず、これまで7度も駆け込んでいる浅草にある銘酒屋の嫁しまのこと。
確かに義母は厳格だが、いびりと言っても、それはお嬢様育ちの嫁しまから見た話で、実際は些細なことで駆け込みを行い、その度に夫や義父から「おねだり」を勝ち取って、嬉々として浅草に戻る。
7度目の駆け込みから半年が経って、また夫が迎えに来るが、今回、しまは寺には来ていなかった。
寺の御用宿を勤める和三郎と、人のよい寺役人・野村市助のコンビが真相を探るのだが……。
基本的には人情話だが、小気味の良い展開で、サッパリとした読後感が好感触。