例えば岡山県新見市。中国山地の山間静かな町だが、なかでも坂本の地は、明智光秀の残党が近江坂本城から落ち延びたところと言われている。
ここに立った著者は、彼らの逃走経路を推理し、乱世の敗戦の武者たちの悲惨な日々に思いをはせる。
また役ノ小角や源頼朝、平家の落人等、幾多の流人を迎えた伊豆、幕末に官軍と会津軍が戦った福島県の大内、隠れキリシタンの島・生月島など13の地を訪ね、歴史の残照に物語を紡いでいく。
かくれ里というだけで、そこはかとないもの悲しさを感じる。
山がちな島国である日本の原風景には、どこかかくれ里のイメージが伴うのかもしれない。