つれづれっぽく読書雑記~気ままにブックレビュー

2006年08月に書いたページ。日ごろから雑多に読んでいる本・書籍について、読書感想文とか雑記とか、つれづれ気ままに書評・ブックレビューを記していきます。

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2006年08月30日

「国境」黒川博行

 関西一円の暴力団を相手に巨額の詐欺を働いた男が、北朝鮮に逃げた。
 組の命を受けた桑原と、半島に人脈のある建設コンサルタントの二宮が平壌へ飛ぶ。
 だが、男は辺境の街に姿をくらませた。
 帰国後、二人は再度、中国を経て密入国を図るが……。日本と北朝鮮とを結ぶ裏社会を構想したミステリー。
 破天荒でコミカルな二人組の決死の冒険に、不思議なリアリティーがある。

2006年08月29日

「ペンネームの由来事典」紀田順一郎

 例えば石川啄木。
 本名は一。17歳で上京するが、栄養失調で故郷の療養所に。
 窓の外から聞こえるキツツキの音。その響きに再起を決意する。
 以来、啄木(キツツキの意)と称した。
 また北原白秋。
 中学時代、友人と文学会を結成。
 筆名はそれぞれ「白」の下に一字を置くことにし、くじ引きで「白葉」「白月」などと書かれた札から、彼が引いたのが「白秋」だった。
 明治の文学者を中心に、知られざるエピソードが満載だ。

2006年08月25日

「盲目の女神」井上淳

 一家4人が惨殺され、現場に血文字が残されていた。
 捜査本部は変質者の犯行と見て主力を投入するが、本流を外され怨恨の線を追わされた刑事達は、思いがけぬ動機の存在を歴史の闇から掘り出す。
 戦時中に上海で暗躍した旧日本軍特務機関の暗殺の手口そっくりだったのだ。
 やがて浮上した意外な犯人とは。――壮大な構想を綿密に構成した長編サスペンス。

2006年08月24日

「語り伝えよ、子どもたちに」S・ブルッフフェルド/P・A・レヴィーン/中村綾乃

 戦争を知らない世代のためにスウェーデンで刊行された叢書の一冊。
 ナチスのホロコーストがいかに遂行されたかを、証言、回想録、日記、絵や詩などの資料を駆使して明らかにする。
 犠牲者にはユダヤ人以外にもシンティ・ロマ(ジプシー)や障害者もいたこと、また、子どもの「出て行けユダヤ人!」ゲームも取り上げるなど、内容は詳細かつ具体的だ。

2006年08月23日

「血の聖壇」加治将一

 ロス近郊で、アジア人らしい男性のバラバラ死体が発見された。
 日本領事館の、警視庁出身の星子領事は、ロス在住の日本人実業家が行方不明になった事件の解決を求められていたが、遺体は別人と判明。
 頼りになるはずの日系警官も辞めたといわれ、消息不明だ。
 星子は手当たりしだいに捜査の手を広げるが、第2の死体が……。異色探偵が活躍する、国際色豊かなスリラーだ。

2006年08月22日

「北夷の海」乾浩

 文化5年春、下級役人の松田伝十郎と間宮林蔵は、樺太が半島か島かの検分のため、現地へ向かった。
 伝十郎は西海岸を、林蔵は東海岸を進む。
 伝十郎に先んじて手柄をたてたい林蔵。だが、荒れる天候に苦しむ。
 東韃靼の山河が見えるラッカ岬に進んだ伝十郎は叫んだ。
 「あっ、島だ!」。
 一方、林蔵は……。
 二人の苦難の行程と葛藤、そして人間像が活写され、生き生きと描き出されている。

2006年08月21日

「論破できるか!子どもの珍説・奇説」松森靖夫編

 例えば「宇宙人がいる確率は2分の1だ。だって『いる』か『いない』かだから」という珍説。
 その伝でいくと降水確率は常に50%になり、天気予報は成立しない。
 宇宙人がいる確率を、地球の人類を基準に考えると、
  1. 液体の水が存在できる温度
  2. 呼吸に必要な酸素の存在
  3. 高等生物に進化するための十分な時間の長さ
等、地球に似た条件の惑星の存在確率が問題になる。
 大人も誤りやすい科学の問題を分かりやすく解説してくれる。

2006年08月20日

「アユタヤから来た姫」堀和久

 江戸の初期、山陰の鹿野藩・亀井家に、シャム王国のアユタヤから、王統の血を引く娘サクラが嫁いで来た。
 異国人への周囲の警戒心や幕府からの圧力など、サクラは様々な苦難に直面する。
 さらに大坂夏の陣などの事件にも遭遇。
 しかし藩主の長男である夫・八郎右衛門を信じ“日本人”として健気に生き抜く。
 実際に、海外貿易で雄飛した鹿野藩の事跡をもとに構想された時代小説。

2006年08月19日

「ダーウィンの剃刀」ダン・シモンズ

 カリフォルニア各地で新手の保険金詐取事件が頻発する。背後に大きな組織があるらしい。
 保険会社の調査員ダーウィンが銃撃されたのは、彼らの手口のほころびを見つけたからなのか?
 州検事局の捜査班と協力して、ダーウィンは事件の洗い直しに着手。だが、必殺の狙撃者が向けられる……。
 斬新な趣向のエピソードが満載だ。

2006年08月18日

「坊ちゃん忍者幕末見聞録」奥泉光

 医術を志す出羽庄内の駆け出し忍者・松吉は、剣術修行に出る庄屋の息子・寅太郎の付け人として、共に京を目指す。
 途中、寅太郎は「尊皇攘夷の一隊に入る」と本心を打ち明ける。
 松吉は念願の医家書生に。陰謀渦巻く幕末の京で迷走する2人。
 新撰組や幕末の知名人が登場し、ユーモアと風刺がきいて痛快だ。
 軽妙な語り口で一気に読ませる歴史ファンタジー。

2006年08月17日

「虚貌」雫井脩介

 一家4人が殺傷された事件から21年。主犯とされた荒勝明が出所した直後から、共犯者たちが次々と殺害され始めた。
 荒の犯行とみて警察は捜査するが、老刑事・滝中は21年前の記憶をもとに独自の追及を試みる。
 加害者、被害者、そして追跡者、それぞれの人生模様が複雑に絡み合いながら、事件は意表の結末へなだれ込む。
 類まれな犯人像を作り上げた長編ミステリー。

2006年08月16日

「雨は激しく」小川竜生

 新型コンピューターの発表を目前に、イベント担当の広告代理店の部長が失踪。
 部下の進藤が後を継いだが、発表当日、ライバル企業から瓜二つの製品が発表される。
 部長がアイデアを盗み出したのか?
 ――進藤は部長のパソコンのデータを分析して追跡を始める。
 だが待っていたのは、二重三重の罠だった。
 広告業界を舞台にした異色ミステリー。

2006年08月15日

「『坊っちゃん』はなぜ市電の技術者になったか」小池滋

 副題は「日本文学の中の鉄道をめぐる8つの謎」。
 漱石の「坊っちゃん」は中学教師を辞め、東京に戻り「街鉄の技手」になる。なぜか?
 著者は、彼が物理学校出身で、再び教職に就く気がなく、また「街鉄」が明治期の東京市電3社の1つ「東京市街鉄道」で、漱石の家の近くを通っていたことなどを考証する。
 他に宮沢賢治の作品から“銀河鉄道は軽便鉄道か”などなど。  鉄道好きでなくても、楽しく読めることは間違いない。

2006年08月14日

「文人たちの十和田湖」成田健

 みちのくの神秘の湖へ――。
 柳田国男の来訪は雪の融けかかる大正5年5月。
 雪中に花をつける山桜を見て“山の神を美しい女性と想像した山村の人が、様々な昔話を夢見たのだろう”と思った。
 国立公園指定15周年を記念する像の制作を依頼された高村光太郎は、昭和27年、自身の影を映す湖水の澄明さにヒントを得、向かい合う2体の乙女像を作った。
 江戸期から現代まで、48人の思いと足跡が掲載されている。

2006年08月11日

「千のプライド」桐生典子

 亡父・榎本修吾が愛した8人の女性のうち最も父を愛してくれた人に遺産を分けたい――資産家の一人娘からの依頼で、弁護士見習いの可南子は調査を始めた。
 それぞれに秘めた女のプライド。
 そこに投射される修吾の人生の断面。
 様々な愛の形を知るにつれ可南子の視線も揺らぐ。
 奇妙な依頼の動機の謎に思い至った時、血の惨劇が。
 ち密な連鎖で紡がれた連作長編ミステリー。

2006年08月10日

「鉢屋秀吉〈第1部〉陰の一族」黒須紀一郎

 有史以来、韓半島から日本に流れた人々の末裔に鉢屋一族がいた。
 技能者、芸能者、忍びとなり、世を生きた。
 一族の子、尾張中々村のひえ吉は14歳で修行に出、3年後、藤吉郎と名乗り信長に仕える。
 機知と才覚で数々の功をあげ、一国一城の領主に。
 羽柴秀吉と改名した彼の背後には、常に悲願達成をもくろむ鉢屋一族がいた。
 太閤記にまつわる謎を描く長編歴史小説。

2006年08月09日

「見出された『日本』」大久保喬樹

 19世紀末から1世紀間に来日したフランス知識人5人の日本像をたどる。
 「お菊さん」の著者ロチにとって、日本は理解不能の異郷だった。
 クローデルには、人と自然が融合した理想の地と映った。
 マルローは、サムライ精神を生んだ風土を愛した。
 バルトは文楽など伝統芸能に多神教性を読み取り、レヴィ=ストロースは文明と野生の共存を日本に発見した。
 西欧中心から異文化共存へ――時代とともに変化する日本観を語る。

2006年08月08日

「共犯マジック」北森鴻

 「フォーチュンブック」――それは不幸だけを予言できると評判の、謎の書だった。
 とある書店でこの本を買い求めた7人が、その後20年間にそれぞれに罪を犯す羽目に。
 彼らの犯罪は間接的な連鎖を織り成して、3億円事件など、昭和の犯罪史の裏面を貫く縦糸のような色彩を放ち始める。
 周到な伏線を張り巡らした見事な構成力で、7編の連作が共鳴し合う長編ミステリー。

2006年08月07日

「自分の骨のこと知ってますか」桜木晃彦

 頑丈で軽く、硬くて弾力のある骨。
 その骨が脳や内臓を守っているのだが、精緻な仕組みは意外と知られていない。
 例えば、骨には血管や神経があること。
 また血液を製造しているのも骨。
 男性の骨はごつくて鋭角的なのに、なぜ、女性のは全体的に丸みを帯びているのか。
 骨の起源から骨の形、老化の仕組み、身体各部位の骨の働きなど、最新の知見を踏まえた“骨学”講座。

2006年08月06日

「日本人の忘れもの」中西進

 例えば、子どもの「ごっこ遊び」。
 「大人のまねごと」は大人への成長過程でもあった。それが失われた今、子どもたちは個室でテレビゲームに興じる。
 また昔の人は自然の力を恐れ、人間の浅はかな傲慢を戒めた。
 だが今の人は、自然の脅威に高をくくってレジャーにふけり、惨事を招く。
 現代人が豊かさと引き換えに、忘れ、失ったものの大切さを考えるエッセー集。

2006年08月05日

「ポットショットの銃弾」ロバート・B・パーカー

 スペンサーシリーズ。
 西部の小さな町・ポットショットから、美女が探偵スペンサーを訪ねてきた。夫を殺した犯人を捕まえてくれという。
 町は流れ者集団に牛耳られ、警察も動けない状況。
 スペンサーは彼らに対抗すべく旧知の凄腕仲間を結集する。
 「荒野の七人」さながらだが、背景に大仕掛けが用意されており、さすが大家パーカーとうならせられる。

2006年08月04日

「トルストイ心の旅路」佐藤清郎

 「人生いかに生きるべきか」に悩み、思索した文豪の生涯を日記や作品からたどる。
 ルソーを愛読した青少年期、農村改善の試み、ツルゲーネフとの出会いと衝突、教会からの破門。
 そうした経緯を通して、教会に盲従する「絶対的帰依の感情」でなく“理性をも納得しうる信仰でなければならない”との信仰観に至った道筋、仏陀・孔子らの思想にも目を向けた内面の軌跡を考える。

2006年08月03日

「ゴールド」響堂新

 バンコクで日本人が次々とショック死した。
 バイオ研究者・吉崎が経営する農園の生産米の安全性が疑われ、大使館付医務官・安斎は吉崎を訪ねるが、協力的な態度であり、コメの分析でも不審な物質は検出されない。
 一方、ジョギング中に襲われたり、留守中に部屋が荒らされるなど、安斎の身辺に障害が――。
 麻薬密造を巡るいざこざを描いた国際色あふれる長編ミステリー。

2006年08月02日

「巴」松浦寿輝

 書家を名乗る老人に見せられた16ミリフィルムに魅せられ、大槻は続編の撮影を引き受けた。だが編集からは外される。
 揚げ句、暴力団まがいの男達に襲われ、過去の女の居所を問いただされる始末。素人の自分になぜ?
 老人の残した謎めいた言葉の意味を問い返す大槻が、ふと気づくと連続殺人事件に巻き込まれていた。
 形而上学的な迷宮に読者を吸引する異色ミステリー。

2006年08月01日

「化学・意表を突かれる身近な疑問」日本化学会編

 ビールはなぜペットボトルに詰めないのか? ペット、つまりポリ(P)エチレン(E)テレフタラート(T)はプラスチック繊維の絡み合いなので、隙間から酸素や二酸化炭素が通ってしまい、気が抜け、味が変わるから。
 サケやウナギはなぜ川と海を行き来できるのか? その時期になると浸透圧を調節するホルモンが出て、血液や体液の塩分を一定に保つから。
 聞かれても答えにつまるような身近な疑問は多い。
 本書では、そんな疑問に対する「なるほど!」という答えがギッシリ。
 70項目のQ&Aが収録されている。
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プロフィール
etacky エタッキー
 地方在住者。
 若干、活字中毒気味。
 ただし読書速度は速くはないので、気ままに読み進めています。
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