つれづれっぽく読書雑記~気ままにブックレビュー

「気ままに書評・ブックレビュー」のカテゴリーページ。
日ごろから雑多に読んでいる本・書籍について、読書感想文とか雑記とか、つれづれ気ままに書評・ブックレビューを記していきます。

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2006年06月22日

「DZ(ディーズィー)」小笠原慧

 横溝正史賞受賞作。
 ワシントンの大学病院の医師グエンは霊長類の遺伝子操作に取り組んでいた。
 だが、彼の実験の真の目的を嗅ぎつけた助手の石橋が殺害される。
 一方、石橋の恋人・志度涼子は、関西の障害児施設で、重度の精神病の少女の治療に専念していた。
 その少女の染色体異常に関する論文に目をとめたグエンは遠路、涼子を訪ねる。
 果たして彼は何を企んでいるのか……。
 遺伝子の奥深い秘密をスリリングに描いている。

2006年06月21日

「明治おんな橋」平山寿三郎

 「それぞれの橋」を三人三様に懸命に渡り、維新の転変を生きた女たちを描いた時代小説。
 大奥から商家に嫁いだ美代は、両国橋を渡って浅草旅篭町の上州屋に嫁入り。
 美代にとって、両国橋は、大奥から商家、士族から平民、慶応から明治、江戸から東京へと渡る橋であり、まだ見ぬ男の妻になりゆく橋であった。
 また、遊女の境遇から大料亭の女将へのし上がったお倉、戦に狂わされた過去を捨てて生きる会津士族の娘の律。
 まさに人生という名の橋渡り。読後にしみじみとした切なさを感じさせてくれる。

2006年06月20日

「アメリカ南西部物語」高橋純

 アメリカ南西部に魅せられて、レンタカーで毎年、ひとり旅を続ける著者。
 古の先住民が描いた岩絵を見るために、荒野のハイウェイを飛ばし、スペイン文化の色濃いサンタフェの街角では、大地の香りに酔う――豊富な写真とともに、南西部の「物理的広さ」「文化的深さ」「劇的に変化する自然」の醍醐味を伝える体験記。
 何より、心を引きつける「磁場」とも言うべき場所で「自分を探す」旅の楽しさが感じられる一書だ。

2006年06月19日

「ヨーロッパのカフェ文化」クラウス・ティーレ=ドールマン

 文人・芸術家が集い、コーヒーを飲みながら議論したカフェ。
 そこを中心に前世紀末の“アール・ヌーボー”など欧州の文化運動は成立した。
 水の都ベニスの「フローリアン」、亡命者が集ったチューリヒの「グランド・カフェ・オデオン」などの名門カフェ。
 またブダペスト、ベルリン、パリのカフェ、イギリスのコーヒーハウスを探訪し、今も残る古き良きヨーロッパを味わうユニークな文化誌だ。

2006年06月18日

「わが夫、還らず」殿島三紀

 ベトナム戦争終結から31年。
 ベトナムやカンボジアの取材で命を落とした5人のジャーナリスト――酒井辰夫、高木祐二郎、柳沢武司、沢田教一、高野功。
 彼らの優れた記者魂を、現場調査を含めて子細に取材。
 また夫亡きあとの年月を、妻たちがどのような苦難に耐え、生きてきたかを描き出す。
 巻末には、同時代にベトナム戦争を取材し、今もフォト・ジャーナリストとして活躍する石川文洋氏の回想録が収録されている。
 戦争とは? 平和とは?……。戦争という極限状態の中で暴かれる人間性。
 今だからこそベトナム戦争から学べることがある。読み終わってそう感じた。

2006年06月17日

「M1(エム・ワン)」池井戸潤

 教え子の女子高生から、父親の会社が倒産寸前だと相談を受けた教師の辛島は、その救済のために、商社勤務時代の財務評価の知識を生かして、大口取引先との交渉に乗り出す。
 その企業は小さな町に君臨し、絶対的な支配力をテコに、独自の通貨を強引に使わせていた。
 交渉は不調に終わるが、辛島は会社の弱点を必死に探し、ついに巨大な悪の構図をあばき出す――。
 異色の経済・金融サスペンスの味わいは、元銀行マンの著者ならでは。

2006年06月16日

「美しい鹿の死」オタ・パヴェル

 森の動物が水を飲みに来る泉。
 チェコ・プラハの人々の素朴な生活も、ヒトラーの侵攻で変わっていく。
 強制収容所に入れられることが決まった息子のため、「おやじ」は銃殺覚悟で犬を連れ、鹿の密猟に出かける。
 ユダヤ人の父とチェコ人の母を持つ著者が、自身の体験をもとに、戦前・戦中のナチス支配から戦後の社会主義へと激しく変化していく世相と美しい自然の中での庶民の家族の温かい絆を描く短編小説集。

2006年06月15日

「暗夜」志水辰夫

 腹を刺され、港に沈められた弟。普通の貿易商のはずだったのに、不法持ち込みされた唐三彩の名品を母に託して隠し持っていた。
 それがトラブルの原因なのか――榊原は弟の足跡を追って中国各地を回り、盗掘団を捜し当てた。だが、弟を巻き込んだ修羅場は、榊原の予想をはるかに超え、大陸に発する恩讐に彩られたものだった。
 中国との深まる交流を背景に描かれたハードボイルド長編。
 巧みな人物造形に説得力が感じられます。
プロフィール
etacky エタッキー
 地方在住者。
 若干、活字中毒気味。
 ただし読書速度は速くはないので、気ままに読み進めています。
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