つれづれっぽく読書雑記~気ままにブックレビュー

「気ままに書評・ブックレビュー」のカテゴリーページ。
日ごろから雑多に読んでいる本・書籍について、読書感想文とか雑記とか、つれづれ気ままに書評・ブックレビューを記していきます。

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2006年06月14日

「好敵手」ブラッド・メルツァー

 仲のいい夫婦サラとジャレッド。
 苦労の末、検事補の職を得たサラは押し込み強盗事件の担当になった。 だが、単純そうな事件の背後に強大な力がうごめくのが見えてきた。
 一方、弁護士である夫のジャレッドに裕福そうな依頼人から仕事が入った。喜ぶ夫だったが、妻の担当事件だと判明。しかも負ければ妻を殺すと脅迫される。
 妻も同様の脅しを受け、二人はだまし合いを余儀なくされる窮地に……。
 互いの命を守るために相手に勝たなければならないというジレンマ。それを軽快なタッチで描いている。

2006年06月13日

「サイレント・ナイト」高野裕美子

 日頃から定期点検の不備を社長に訴えているベテラン整備士・古畑実だが、15年前の高校時代のワル仲間が相次いで殺害された。
 一方、華々しく新規参入した航空会社の機体から不発の爆弾が見つかった。古畑は心ならずも事件に巻き込まれていく。
 社長・鶴見の周辺に暴力団の影が浮かぶが、犯人像に決め手がないまま、今度は鶴見の息子が誘拐された。
 犯人は金品ではなく、ジャンボ機を集めて爆破するよう要求。時間切れ目前、連続殺人と鶴見との、長い時を隔てた意外な接点が……。
 ヒューマンタッチの臨場感あふれる犯罪サスペンス。じっくり推理の過程を楽しめる。

2006年06月12日

「海の隼」大島昌宏

 1600年3月、オランダ船リーフデ号が豊後の臼杵湾に漂着した。
 その生き残りの乗組員24人の中にいたイギリス人の航海長ウイリアム・アダムス。彼は砲撃手として関ケ原の合戦に参加し、徳川家康を勝利に導く。
 以後、相模国三浦郡に所領を得て三浦按針と名乗り、家康の旗本・外交顧問としてオランダやイギリスとの交易推進などで活躍。
 その数奇な運命を描いた歴史小説。イギリス人の目に映った家康像が興味深い。

2006年06月11日

「地下墓地」ピーター・ラヴゼイ

 改装工事中のビルの床から20年前の手首の骨が発見された。しかもそこは、かつて小説『フランケンシュタイン』が執筆された場所であることが判明し、マスコミは騒然とする。
 さらに、ゆかりの品を所蔵していた骨董商が殺害されて、事件はいよいよ錯綜していく。
 ダイヤモンド警視は新任副署長の圧力を受け、同僚刑事との縄張り争いの確執をぼやきながら、鈍重に見えて鋭い追求を重ね、意外な犯人をあぶりだす。
 ゴシック・ホラー風味もきかせながら、謎を解いていく過程も読ませる。

2006年06月10日

「国際結婚イスラームの花嫁」泉久恵

 世界の三大宗教と言われる中で、日本人にとってイスラム教への理解が最も薄いのではないか。  本書は、アフガニスタンに嫁いだ日本人女性の数奇な人生をたどるドキュメンタリー。
 異なる衣食住へのとまどいや、一夫多妻制ゆえの「もう一人の妻」との確執。更にソ連のアフガン介入が、夫婦を十九年間、遠ざけることになる。
 見えにくかったイスラム社会を、その中で暮らす女性の視点から描いている。
 命がけの国外脱出談では、難民の抱える苦悩も浮き彫りに。
 その中でも、京都出身の女性の前向きな性格と、はんなりした言葉遣いが、重い内容をも明るくしていると思う。

2006年06月09日

「かくれ里紀行」早乙女貢

 例えば岡山県新見市。中国山地の山間静かな町だが、なかでも坂本の地は、明智光秀の残党が近江坂本城から落ち延びたところと言われている。
 ここに立った著者は、彼らの逃走経路を推理し、乱世の敗戦の武者たちの悲惨な日々に思いをはせる。
 また役ノ小角や源頼朝、平家の落人等、幾多の流人を迎えた伊豆、幕末に官軍と会津軍が戦った福島県の大内、隠れキリシタンの島・生月島など13の地を訪ね、歴史の残照に物語を紡いでいく。
 かくれ里というだけで、そこはかとないもの悲しさを感じる。
 山がちな島国である日本の原風景には、どこかかくれ里のイメージが伴うのかもしれない。

2006年06月08日

「北海道人 松浦武四郎」佐江衆一

 知らないことというのは、本当に多いもの。
 本書で紹介されている松浦武四郎とは、幕末の激動期に、北方のロシアの脅威に目覚めた探検家。志士であり、民俗学者・地理学者・植物学者でもある。
 そして「北海道」の名付け親でもあります。
 この時代に一人、松前藩の苛政によるアイヌの惨状に心痛し「ロシアの南下をこれでは阻止できぬ」と喝破。アイヌの生活や人口の変化、彼らの窮状や産物の調査などをするなか、「アイヌは和人も及ばぬ高徳の民」と、敬愛の念で接した。
 波瀾の生涯を活写した歴史小説として、おすすめの一書。

2006年06月07日

「パナマの仕立屋」ジョン・ル・カレ

 舞台は返還間近のパナマ運河。
 利権の行方を巡り、各国の思惑が交錯する中、富豪や高官相手の仕立屋を営んでいるペンデルが“偽りの経歴を暴く”と脅され、英国のにわかスパイになってしまう。
 監督官の追及に応じたいばかりに、ペンデルの嘘はふくらみ、遂には反政府勢力が蜂起するとのデマを創作してしまう。が、英国側がこれを真に受け、大々的な支援態勢に入ってしまい、事態は意想外の方向へ――。
 揺れる英国大使館の様子に失笑しながら読み終えた。
 スパイ小説と言えば、有能な登場人物が難事件を解決という形だったが、本書は、無能な人間が引き起こすコントロール不能な大事件を描く。
 ある意味、冷戦後のスパイ小説の一つの道を示したと言えるかも知れない。
プロフィール
etacky エタッキー
 地方在住者。
 若干、活字中毒気味。
 ただし読書速度は速くはないので、気ままに読み進めています。
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