まさに「へこたれない女性」――このワンガリ・マータイさんの激動の半世紀を読んで、不屈の精神をもっていることを実感した。
ケニアで部族差別と女性差別に遭い、就職を拒絶される。
政治家だった夫との離婚裁判では、裁判官を批判した罪で投獄された。
木を植えただけで反政府運動家扱いされ、暴漢に殴られ流血。
選挙に立候補すれば、デマと妨害で落選。職も追われ、3人の子供を抱えて路頭に迷うことに。
それでも彼女はへこたれなかった。
「忍耐強く、ねばり強く、そして全力で、絶えず前進する姿勢こそが民主主義」だという確信に貫かれた人生。
その確信は、アメリカ留学中に学んだ公民権運動にもとづいているという。
さらなる原点は、彼女の「母」の存在にさかのぼる。
価値観を娘に押し付けることは一切せず、穏やかに娘を見守った「母」。
「もったいない」という言葉に価値を見いだしたマータイさんの精神的骨格には、飾らない実直な「母の心」が貫いているのだろう。
超人的に思える彼女だが、その心の核の部分は、私たち凡人にも、十分理解し共有できる。
その共感から、平和も環境も、そして社会も改めていけると信じたい。
本書「
UNBOWEDへこたれない~ワンガリ・マータイ自伝」は、そう思わせてくれる一書だ。