つれづれっぽく読書雑記~気ままにブックレビュー

「気ままに書評・ブックレビュー」のカテゴリーページ。
日ごろから雑多に読んでいる本・書籍について、読書感想文とか雑記とか、つれづれ気ままに書評・ブックレビューを記していきます。

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2008年03月22日

『歴史にみる「日本の色」』中江克己

 本書『歴史にみる「日本の色」』は、卑弥呼の古代から江戸期まで、日本人と色とのかかわりを、興味深いエピソードとともに紹介する。
 例えば源平合戦で、源氏は白、平氏は赤の旗を掲げていた。
 当時、武士は布を白地のまま使うのが普通だった。何かを書くにも便利だからだ。
 その「白」に対して、平氏は敵味方の峻別のため分かりやすい「赤」を用いたらしい。
 また、黄色は古代には、中国の影響で、尊い色とされたが、持統天皇の頃には庶民の色になった。そこには、黄の染料が豊富だった事情もあるなど。
 「色」に込められたイメージや思いは、時代によって移り変わる。
 それを眺めるように読むだけでも歴史の楽しさが感じられる。

2008年02月15日

「キメラの繭」高野裕美子

 高野裕美子氏が今月10日に逝去されました。
 謹んでご冥福をお祈りしつつ、著書である「キメラの繭」のレビューを再掲させていただきます。

 2009年冬の東京。
 大学のウイルス研究室に勤める立科涼子は、不可解なアレルギー症状で急死した弟の死の原因を究明しようとするが、実験用のマウスに同様の症状が現れる。
 餌を作った世界最大のバイオ企業に連絡を取った直後、研究室に何者かが侵入した。
 一方、街ではカラスが凶暴化し、通行人を襲い始めた。
 二つの異変の間に関係があると見た涼子は、必死に立証に取り組むのだが……。
 リアリティーにあふれるサスペンス。

2008年01月24日

「1プードの塩」小林和男

 元NHKモスクワ支局長として“奥深い”ロシアの魅力を語り続ける著者。
 ゴルバチョフ元ソ連大統領、チェリストのロストロポーヴィッチなどの著名人から官僚、知識人、市井の人々まで、ソ連崩壊からロシア誕生という混乱の中で出会った数十人について愛情を込めてつづる。
 その人々の喜びや苦しみの背景にある「国家の姿」も見えてくる。
 激動期を懸命に生きた人々の貴重な記録としても読めるエッセイだ。

2007年12月23日

「ブルゴーニュ公国の大公たち」ジョゼフ・カルメット

 14世紀のフランス東辺はヴァロワ家の支配下、4人の傑出した大公が出た。
 フィリップ大胆公、ジャン無怖公、フィリップ善良公――彼らは彫刻・建築など中世文化を花開かせた。
 婚姻によりネーデルランドの商業圏に手を伸ばした後、英国と同盟し本国ルイ11世に対抗する。
 だが、シャルル突進公に至って王家との争いに敗れ権勢を失う。
 ドイツやスペインも巻き込んだ百年戦争の全貌を、克明に描き出す。
 歴史書だが、非情にわかりやすい文章で飽きさせません。

2007年11月14日

「夜明けの街で」東野圭吾

 東野圭吾が描く恋愛物って、どんな感じだろう? そんな疑念を持ちつつ手にしたのが本書「夜明けの街で」。
 建設会社の主任・渡部は妻と娘がいるごく普通の、しかし小さな幸福を感じている中年男。
 その一方で、会社の部下・仲西秋葉と一線を越え、不倫の恋に落ちる。
 だが彼女は、時効間近の殺人事件の容疑者だった。
 両親は離婚し、母親は自殺。彼女の横浜の実家では、15年前、父の愛人が殺されたのだ。
 ずるずると深まっていく二人の関係。
 彼女は「時効になったら話したいことがある」と言う。
 果たして事件の真相とは?
 時に滑稽な中年男の恋愛感情を中心に、巧みな展開で読者を振り回してくれる。こんな東野圭吾も、たまには良いかもしれない。

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2007年10月24日

「われらはみな、アイヒマンの息子」ギュンター・アンダース

 ユダヤ人哲学者であり、反核運動家でもある著者ギュンター・アンダースが、アイヒマンの息子に宛てた公開書簡を単行本化したのが本書「われらはみな、アイヒマンの息子」。
 ナチスドイツでユダヤ人大虐殺を遂行したアイヒマン。
 凡庸とも言える一官吏が、何故あれほど非人間的になり得たのだろうか?
 著者は「人間は誰しも、想像力の限界を超えた現実に遭遇すると、思考停止に陥るからだ」と述べている。
 振り返って現代、「核抑止論」をはじめ、核兵器の存在を認める人たちにも“内なるアイヒマン”が潜んでいる。

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2007年10月10日

「いっしん虎徹」山本兼一

 越前で名のある甲冑鍛冶・長曽祢興里は、30代半ばを過ぎて江戸の刀鍛冶に入門。
 名を「虎徹」と改め、自ら鍛え上げた当代一の兜を叩き斬る刀、しかも「気品と尊厳」を備えた刀作りに全身全霊を込める。
 虎徹と名乗ったのは、虎と見誤って石を射抜いた故事から「石虎将軍」と呼ばれる中国の武人・李広の執念をわがものにしたいとの思いから。
 本書「いっしん虎徹」は、鉄と格闘し、日本一の名刀を鍛えた男の波乱と情熱の物語だ。

2007年09月21日

「おねだり女房」宮本昌孝

 “縁切り寺”と呼ばれる鎌倉の東慶寺を舞台にした、一風変わった時代小説「おねだり女房 影十手活殺帖」。
 4編の短編時代小説が収録されている。
 タイトルにもなっている「おねだり女房」は、義母のいびりに耐えきれず、これまで7度も駆け込んでいる浅草にある銘酒屋の嫁しまのこと。
 確かに義母は厳格だが、いびりと言っても、それはお嬢様育ちの嫁しまから見た話で、実際は些細なことで駆け込みを行い、その度に夫や義父から「おねだり」を勝ち取って、嬉々として浅草に戻る。
 7度目の駆け込みから半年が経って、また夫が迎えに来るが、今回、しまは寺には来ていなかった。
 寺の御用宿を勤める和三郎と、人のよい寺役人・野村市助のコンビが真相を探るのだが……。
 基本的には人情話だが、小気味の良い展開で、サッパリとした読後感が好感触。
プロフィール
etacky エタッキー
 地方在住者。
 若干、活字中毒気味。
 ただし読書速度は速くはないので、気ままに読み進めています。
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